食欲不振の症状でお困りの方へ
食事を摂ってもいないのに、お腹が減らない、食べる気がおこらないといった状態を食欲不振と言います。極端な疲労の蓄積、ストレスなどの生活上の問題、服用している薬の副作用などであれば、十分に休憩を取る、ストレスを解消する、原因となっている薬を変更・休薬するといったことで比較的短期に解消できます。しかし、いつまでも食べられない状態が続くようなケースでは、何らかの疾患によって食欲不振となっている可能性もあります。
また、食欲不振で決まったものしか食べられなくなると、バランス良く栄養を摂れなくなり、さらに状態を悪くしてしまうことも有り得ます。以下のような症状に心当たりがある場合は、おはやめに専門医を受診しましょう。
このような食欲不振の症状はありますか？
- 食事を摂ることが面倒だ
- 食べ物の味を感じなくなってきた、美味しいと感じなくなってきた
- 食事を摂ることをたびたび忘れるようになった
- あっさりしたもの、のどごしがいいものばかり食べている
- 数週間から1か月以上にわたって食欲不振が続いている
- 食欲不振が続いて、体重減少があった
- 食べようと思っても胃痛・腹痛で食べる気がなくなる
などのような症状でお困りの場合は、いつでも当院までご相談ください。
食欲不振の原因は
食欲不振は、ストレス、疲労、食生活の乱れ、運動不足、睡眠不足などからおこることがありあます。これらの状態では自律神経の乱れが生じ、交感神経優位になることで食欲が低下してしまうケースです。また、過度の飲酒・喫煙などでも食欲低下がおこることがあります。
これらは一過性で、生活習慣を整えたり、ストレスを解消できたりすれば、自然と治っていくことが多いのですが、中々治らない、長期間続く食欲不振は、何らかの消化器疾患や内分泌疾患、全身疾患などの可能性があります。食欲がいつまでたっても戻ってこない、痩せてきてしまったなどの場合は、重大な疾患が原因となっていることもありますので、お早めに医療機関を受診してください。
食欲不振が起こる主な疾患
胃がん
胃がんは早期のうちはほとんど自覚症状がありません。しかし進行してくると、免疫にかかわるサイトカインという物質がだんだん増えてくることによって、胃の機能が低下し、食欲不振となることがあります。胃がんのほとんどはピロリ菌感染が原因と考えられています。
慢性胃炎・萎縮性胃炎
ピロリ菌が胃の中に棲みつくと、胃酸による攻撃と胃粘膜の粘液による防御のバランスが乱れて、胃粘膜に炎症がおこり、だんだん拡がっていきます。これによって胃の消化機能が低下して食欲不振がおこることがあります。慢性胃炎が続くと胃粘膜が萎縮して繊維化してしまうことで萎縮性胃炎となります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍はピロリ菌感染によって、胃粘膜が胃酸の攻撃に直接さらされるようになり、粘膜が損傷して深く傷ついた状態です。一方十二指腸潰瘍は膵液や胆汁などの分泌が低下して胃酸が中和されなくなることでおこることが多い潰瘍です。どちらも、胃痛などとともに食欲不振がおこります。
甲状腺機能低下症
橋本病に代表される甲状腺機能の低下によって、甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、全身の活性が低下し、食欲不振、身体全体のむくみ、気力の低下などといった症状があらわれます。だるさ、倦怠感、むくみなどがあって食欲不振がともなう場合は、甲状腺機能の検査も受けるとよいでしょう。
食欲不振に対する診断・治療
食欲不振は、一過性のあまり心配のないものから、胃がんなどの重篤な疾患まで、実に様々な原因によっておこります。とくに上部消化管の症状は、慢性胃炎や潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、がんなど、疾患の種類にかかわらず似たような症状があらわれることが多く、また、症状の強さと疾患の重篤さが必ずしも一致しないことも多くなっています。そのため、食欲不振で受診された場合、これまでの経緯、食欲不振以外にどのような症状があるか、既往症、現在治療中の病気、使用している薬などについて詳細な問診を行います。
とくに薬の副作用が原因となっているかどうかを確認するため、受診の際、お薬手帳をご持参いただいております。お薬手帳のない方は服用中のお薬の現物をすべてお持ちいただいてもかまいません。
問診である程度原因を切り分けて、生活習慣が原因と思われる場合は食事療法や運動療法、生活習慣の乱れの改善のための指導を行います。それに合わせて、胃の働きを調整する薬や吐き気を抑える薬などで対症療法を行うこともあります。
疾患が原因となっていると考えられる場合は、それぞれの疾患に必要な検査を行って原因疾患を特定し、それぞれにあわせた適切な治療を行っていきます。