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甲状腺機能低下症(橋本病)

甲状腺機能低下症とは

甲状腺はのどぼとけの下にある内分泌器官です。甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは私たちの身体の各部位の新陳代謝をつかさどり、活性化させる働きや、妊娠を成立させ、人の成長をつかさどる性質をもっています。甲状腺の機能が何らかの理由で低下すると、甲状腺ホルモンの働きが弱まることで、様々な症状があらわれます。こうした状態を甲状腺機能低下症といい、甲状腺そのものに問題がある原発性のものと、甲状腺にホルモン分泌に関する指令を送っている下垂体に原因がある中枢性のものがあります。
中でも原発性のものの代表的な存在が橋本病です。
甲状腺の疾患は、疾患の種類にあわせた検査を行い、適切な治療を行うことで症状をコントロールすることができますので、内分泌内科などの専門医にご相談ください。

甲状腺機能低下の症状

  • 足がつりやすい
  • 皮膚にかゆみを覚えやすい、乾燥しやすい
  • 寒く感じるようになった
  • 疲れやすくなってきた
  • 体重が増えてきた
  • むくみやすい
  • 便秘
  • 月経の周期が不安定
  • 流産
  • 妊娠しにくい

など

橋本病とは

橋本病は慢性的に甲状腺に炎症がおこることによって、だんだん甲状腺の機能が低下していく疾患です。男女ともに発症しますが、とくに20歳代半ばから40歳代ごろまでの女性に多く、男女比率は男性1:女性20程度です。それほど珍しい疾患ではなく、男性では40人に1人程度ですが女性では10人に1人程度の頻度で橋本病を発症します。この病気になったからといって、かならずしも全員に甲状腺機能の低下があらわれるわけではなく、多くの人は症状がないまま気づかずに暮らしており、甲状腺機能があらわれるのは、罹患者のうち2~2.5割程度という報告があります。ごく稀に甲状腺の悪性リンパ腫の母体となることもありますが、ほとんどの場合良性の疾患で日常生活への影響も少ない方です。
ただし、重症化してくると甲状腺ホルモン不足による様々な症状があらわれてきます。月経不順や倦怠感、疲労感など更年期障害やうつ病と症状が近いこともありますので、正確な鑑別が大切になります。
橋本病は適切に診断し、甲状腺ホルモンを補充することで症状をコントロールすることが可能です。そのため、少しでも甲状腺疾患が疑われる場合は内分泌疾患の診療経験をもつ専門医を受診することをお勧めします。
なお、橋本病という病名の由来は、我が国の医師・病理学者であった橋本策(はかる)によってはじめて報告されたことによります。

橋本病の原因

橋本病は、何らかの原因で免疫システムが甲状腺の細胞を攻撃してしまう、自己免疫疾患の一種で、自己免疫疾患のなかでも一番ポピュラーなものとして知られています。自己免疫反応によってたえず甲状腺に炎症をおこすことから慢性甲状腺炎と呼ばれることもあります。自己免疫がおこる原因については今のところはっきりとはしていません。この炎症によって甲状腺の機能が障害され、甲状腺ホルモンの分泌が現象することで、甲状腺機能低下症があらわれます。

橋本病の検査と診断

血液検査によって、甲状腺の機能、TgAb、TPOAbといった抗甲状腺抗体の有無、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンのTSHなどを調べ、甲状腺全体が腫れていないかどうかなどの触診を行い、それらの結果を総合して診断します。

橋本病の治療

甲状腺機能に問題がなく、甲状腺の腫れも軽度の場合は経過観察となります。しかし、甲状腺機能が低下してホルモンの分泌が低下している場合は、甲状腺ホルモンの補充を行うことになります。甲状腺の腫れがひどい場合は手術によって甲状腺を摘出することもあります。