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糖尿病の症状とは?危険サインを現役医師が解説

その他糖尿病関連  / 森利枝の独り言

糖尿病の症状

こんにちは。現役医師の森利枝です。

糖尿病は「サイレントキラー」と呼ばれるほど、初期症状が分かりにくい病気です。
多くの人が気づかないうちに進行し、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

この記事では、現役医師の臨床経験をもとに、絶対に見逃してはいけない糖尿病の危険サインを詳しく解説します。

 

糖尿病症状の進行パターン

糖尿病の症状は、体の中でも特に「細い血管」が多い部分から順番に現れやすくなります。

一般的な進行順序

1.尿の異常(頻尿・尿の泡立ち) 2.皮膚の症状(乾燥・かゆみ・感染症) 3.手足のしびれ・感覚異常 4.目の症状(網膜症)

ただし個人差があり、必ずしもこの順番通りに進行するとは限りません。

 

 尿の異常(最初に現れる症状)

糖尿病の尿の異常

なぜ尿に症状が現れるのか?

腎臓は「体のフィルター」として、血液をろ過して老廃物を尿として排出しています。
健康な状態では糖分は腎臓で再吸収されますが、血糖値が約160~180mg/dlを超えると、腎臓の処理能力を超えて糖分が尿に漏れ出ます。

症状チェックリスト:尿の異常

☑ 頻尿(トイレが近い)

  • 正常な排尿回数:1日3〜7回 要注意:1日8回以上、または今までより排尿回数が明らかに増えた場合
  •  

☑ 夜間頻尿

チェックポイント
◻︎夜中に2回以上トイレで目が覚める ◻︎ほぼ毎日トイレのために起きる ◻︎睡眠不足で日中の生活に支障が出る


医学的には、夜中に1回でも目が覚めれば夜間頻尿と定義づけられます。しかし、1回程度なら高齢者や水分摂取量が多い方ではよくあること。必ずしも異常とは限りません。チェックポイントに1つでも当てはまったら1度病院で検査してみることをお勧めします。

☑ 尿の泡立ち

糖尿病による泡立ちの特徴
◻︎泡が細かくて密集している ◻︎泡の量が多い ◻︎5分経っても泡が消えない


ただ、尿に泡が出たからといって必ず糖尿病とは限りません。
他にもいくつか原因があるので、違いを見てみましょう。

他の原因との見分け方
勢いよく排尿した場合:泡は大きく、すぐに消える
脱水気味の場合:濃い黄色で泡立つが、水分補給で改善
糖尿病の場合:泡が細かく、持続的に泡立つ

皮膚の症状(血管と免疫力の低下)

糖尿病の皮膚の症状

なぜ皮膚に症状が現れるのか?

皮膚は全身で最も大きな臓器であり、無数の毛細血管と神経が張り巡らされています。
高血糖状態が続くと、毛細血管の血流が悪化することで、皮膚が乾燥しやすくなる、皮膚の感染症にかかりやすくなる、傷の治りが遅くなるといった症状がみられるようになります。

症状チェックリスト:皮膚の異常

☑ 皮膚の乾燥

特徴的な症状
◻︎全身(特に腕や足)がカサカサする ◻︎粉をふいたような状態 ◻︎強いかゆみを伴う ◻︎保湿しても改善しにくい

☑ 感染症にかかりやすい

よくある感染症
◻︎水虫:足の指の間がジュクジュクする、皮がむける ◻︎カンジダ症:女性では膣カンジダ、男性では陰部のかゆみ 
◻︎とびひ:小さな傷から細菌感染が広がる        ◻︎ヘルペス:口唇や陰部に水疱ができる

☑ 傷の治りが悪い

症状の特徴
◻︎小さな切り傷や擦り傷が1週間以上治らない ◻︎かさぶたができにくい ◻︎傷口から膿が出やすい


 手足のしびれ(神経障害のメカニズム)

糖尿病の手足の痺れ(神経障害)

なぜ手足にしびれが起こるのか?

神経は「電線」のような働きをしており、脳からの信号を手足に伝えています。
この神経も血管から栄養を受けており、高血糖が続くと、栄養を送る血管が傷み、神経も糖化して変性します。
その結果、信号の伝達速度が遅くなり、最終的に感覚が失われます。

 

症状チェックリスト:神経障害

☑ 感覚の異常

初期症状
◻︎足先や指先がじんじん・ピリピリする ◻︎靴下を履いているような感覚 ◻︎細かい作業(ボタンを留める、箸を使うなど)がしづらい

進行した症状
◻︎痛みを感じにくい ◻︎熱さ・冷たさが分からない ◻︎足裏の感覚がない

☑ 運動機能の低下

症状の特徴
◻︎手に力が入りにくい ◻︎歩行時につまづきやすい ◻︎階段の昇り降りが不安定

分布パターンの特徴
糖尿病による神経障害は「手袋・靴下型」と呼ばれ、手足の先端から症状が始まり、徐々に体の中心に向かって進行します。また、左右対称に現れることが特徴です。

 

最も危険な「感覚麻痺」

感覚が鈍くなると、靴の中の石で出血しても気づかない、熱湯でやけどをしてもわからない、怪我に気づかず感染が進み切断に至るなど、深刻な事態に陥ることもあります。

目の症状:網膜血管の破綻

糖尿病の目の症状

なぜ目に症状が現れるのか?

目の奥にある網膜は、無数の毛細血管が張り巡らされています。
高血糖状態が続くと、血管が弱くなり、出血や詰まりが起こることで、酸素不足から脆い新生血管が発生します。これが進行すると網膜剥離を起こし、最終的に失明につながります。

症状チェックリスト:目の異常

☑ 視力の変化

初期症状
◻︎文字がぼやけて見える ◻︎近視や遠視が急に進行した ◻︎眼鏡やコンタクトを新調しても見えにくい

進行した症状
◻︎視野の一部が欠ける ◻︎視界に黒いカーテンがかかったような感覚 ◻︎突然見えなくなる

☑ 光に対する異常

症状の特徴
◻︎まぶしさを強く感じる ◻︎暗い場所から明るい場所への適応が遅い ◻︎夜間の運転で対向車のライトが異常にまぶしい

☑ 飛蚊症の悪化

正常な飛蚊症との違い

  • 正常:透明な糸くずのようなものがゆっくり動く
  • 危険:黒い点やカーテンのようなものが視野を遮る

    糖尿病による視力低下は「年のせい」とは違います。進行が早く、両目に同時に起こりやすく、放置すると元に戻りません。

 

糖尿病の「し・め・じ」:三大合併症の詳細解説

糖尿病の三大合併症「しめじ」

し:神経障害(糖尿病性神経障害)

進行パターン
感覚神経障害:痛み、しびれから始まる ➡︎ 運動神経障害:筋力低下、筋肉の萎縮 ➡︎ 自律神経障害:胃腸の動き、性機能、心臓の調節機能に影響

最終的な影響
足の切断リスク、胃腸機能障害(便秘、下痢)、性機能障害(男性:勃起不全、女性:性交痛)、起立性低血圧(立ちくらみ)

め:網膜症(糖尿病性網膜症)

病期の進行
単純網膜症:小さな出血、白斑 ➡︎ 前増殖網膜症:血管の閉塞、酸素不足 ➡︎ 増殖網膜症:新生血管の出現、出血 ➡︎ 網膜剥離:失明

日本の失明原因 糖尿病網膜症は日本人の失明原因の第3位(10.2%)を占めています。

じ:腎症(糖尿病性腎症)

進行段階
第1期(腎症前期):正常(症状なし)➡︎ 第2期(早期腎症期):微量アルブミン尿 ➡︎ 第3期(顕性腎症期):タンパク尿、血圧上昇 ➡︎ 第4期(腎不全期):腎機能低下、むくみ ➡︎ 第5期(透析療法期):人工透析が必要

透析の現実
週3回、1回4時間の治療が生涯必要 年間医療費:約500万円 5年生存率:約60%

透析は、HbA1cや血糖値が高い状態を放置し続けた場合に陥るケースが多いです。しかし、糖尿病による透析治療は、かなり血糖値が高い状態を放置し続けなければ大丈夫なことも。しっかり糖尿病に向き合い、血糖コントロールを行うことで予防することができます。

早期発見のための3つの方法

年1回の健康診断(最重要)

これが最も確実な早期発見方法です。

重要な検査項目
空腹時血糖値:126mg/dl以上で糖尿病型
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):6.5%以上で糖尿病型
尿糖・尿タンパク:腎機能の評価

仕事で忙しい、めんどくさい、別に悪いところなんてないからまだ大丈夫だろうは「気づいたら遅かった」の入り口です。年に1回必ず受けましょう。

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小さな違和感を見逃さないこと

今回お話したような小さな違和感を見逃さないでください。
体は絶対に何らかのSOSサインを出しています。

セルフチェック表

症状カテゴリ チェック項目 該当
尿の症状 トイレの回数が増えた
  夜中にトイレで2回以上起きる
  尿に泡が立つようになった
皮膚の症状 全身が乾燥してかゆい
  小さな傷が治りにくい
  水虫などの感染症になりやすい
神経症状 手足がしびれる・ピリピリする
  細かい作業がしづらい
  足の感覚が鈍い
目の症状 視界がぼやける
  視野に黒い点が見える
  明るさの変化に慣れにくい
全身症状 異常に喉が渇く
  疲れやすい
  体重が急に減った

 

まとめ:今すぐ始められること

糖尿病は決して特別な人だけの病気ではありません。むしろ誰にでも起こり得る病気の一つです。「糖尿病は治らない」「あれもダメ、これもダメ」と医者に言われて絶望している方も多くいらっしゃいます。しかし、早期発見・早期治療により、たった数ヶ月で普通の方と同じ生活を送れるようになったという方も実際多いのです。

この記事があなたの健康管理のきっかけになり、より良い未来への第一歩となれば幸いです。症状に心当たりがある方は、内科・糖尿病専門医にご相談ください。

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※この記事は医療情報の提供を目的としており、診断や治療の代替となるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

監修・執筆:医師 森利枝
最終更新:2025/09/30