健康診断では見つからない「血糖値スパイク」とは?原因・症状・対策を専門医が解説
血糖値スパイクとは?

食後 1〜2 時間の血糖値が急上昇し、急降下する現象を指します。
食事で急激に上がった血糖値を下げるため、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンが大量に分泌され、その後急激に血糖値が下がることで発生します。
一般的な健康診断では、空腹時血糖値を測定するため、血糖値スパイクが起こっていることには気づきにくいです。
血糖値スパイクは以下のような健康リスクの増加と関連します。
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動脈硬化の進行
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心筋梗塞・脳梗塞など突然死リスクの上昇
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強い食後の眠気、倦怠感、集中力低下
特に 食後の強い眠気は、急上昇した血糖値を下げるためインスリンが大量に分泌され、血糖値が急激に低下することで起こる代表的なサインです。
食事だけでなく、飲み物にも注意
血糖値スパイクは糖質の多い食事だけでなく、
スポーツドリンクやジュース(清涼飲料水)を「水代わり」に飲む習慣でも起こります。
糖分の入った飲み物は吸収が非常に速く、血糖値が300〜400 mg/dL以上に急上昇し、のちに急降下して気分不良を招くこともあります。
特に、暑さの厳しい夏は、水分補給のためにスポーツ飲料を大量に摂取し、血糖値が急激に上がり、救急搬送される例も少なくありません。
血糖値スパイクを抑える食事法
糖質は「脂質・タンパク質」と一緒に取る
タンパク質や脂質には糖質の吸収をゆるやかにする働きがあり、食後血糖の急上昇を抑える効果があります。
さらに、良質なタンパク質と脂質はインスリンの分泌をサポートし、血糖変動を安定させる役割もあります。
例:
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チャーハンは塩むすびより血糖上昇が緩やか
(米が油でコーティングされ、吸収がゆっくりになる) -
バタートーストはジャムトーストより血糖値が上がりにくい
食品としては、オリーブオイル、卵、大豆製品、肉、魚など、
良質な脂質とタンパク質を適量取り入れることで、血糖値スパイクの予防に効果的です。
しかし、脂質もタンパク質も大量に摂取してしまうと、カロリーが過剰になり、体重増加に繋がるため注意が必要です。
食物繊維の摂取が最も重要
野菜・海藻・きのこなどの食物繊維は、
糖の吸収をゆっくりにする最も重要な栄養素です。
食事の最初に野菜から食べる「ベジファースト」が効果的です。
間食の活用
血糖値は午後3〜5時が最も下がりやすい時間帯です。
ここで空腹を放置すると、夕食で一気食い → 血糖値スパイクの原因に。
実際に、間食は悪だと思い空腹を我慢、夕食を食べ過ぎて血糖値スパイクを起こしている方は多いです。
間食の目安:糖質20g以内

野菜 → たんぱく質 → 炭水化物の順に食べる
血糖値スパイクを抑えるためには、食べ順が大切になってきます。
野菜やたんぱく質を先に食べることで、胃の中での食べ物の出ていくスピードがゆっくりになり、結果として糖の吸収が穏やかになることが知られています。
【参考文献】2型糖尿病における食事順序と血糖変動、胃内容排出、インクレチン分泌:ランダム化比較クロスオーバー探索試験
痩せていても糖尿病のリスクはある
「太っている人だけが血糖値が上がりやすい」は誤解です。
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BMI18以下のやせ体型でも血糖値スパイク・糖尿病は起こる
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特に女性のやせ型糖尿病は増加傾向
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性別に関わらず、筋肉量の少なさが大きなリスク
筋肉は糖を取り込む“最大の臓器”。筋肉量が少ないと、血糖値が上昇しやすく、下がりにくい体質になります。
遺伝的リスクにも注意

家族に糖尿病患者がいる場合、その発症リスクは明確に高まります。
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新潟大学の研究結果によると
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家族に1人糖尿病患者がいる → 約2.7倍
家族に2人糖尿病患者がいる →約6倍 -
家族に3人糖尿病患者がいる→ 約12倍
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3世代すべてに糖尿病患者がいる場合、
家族歴が全くない人と比べて糖尿病の有病リスクは約20倍に達する
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【参考資料】~2型糖尿病、高血圧、脂質異常症の有病・発症リスクに対する親族内罹患状況(家族歴)の詳細な影響を健診大規模データにより解明
遺伝要因は糖尿病リスクの大部分を占めるとされ、
家族歴のある人は特に食後血糖の意識が必要です。
血糖値スパイクのセルフチェック
以下の3項目以上当てはまる場合は要注意。
多く当てはまるほど、血糖値スパイク発症リスクが高まります。

まとめ
血糖値スパイクは、「健康診断では正常」と言われていても起こりうる 見えないリスク です。
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・食後の眠気
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・疲れやすさ
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・どか食い
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・清涼飲料水の頻用
こうした日常の小さなサインを見逃さないことが大切です。
食物繊維・脂質・タンパク質の“食べ方の工夫” と 適度な運動 で、このリスクは大幅に下げることができます。
さらに詳しく知りたい方のために、
朝の情報番組、サン!シャインで“血糖値スパイクの正しい向き合い方”を解説したYouTube動画をご紹介します。
糖尿病専門医が分かりやすくお話ししていますので、ぜひご覧ください。
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