【医師が解説】糖尿病を悪化させるおやつ・改善するおやつTOP5|血糖値を上げない食べ方のコツ
こんにちは。医師の森利枝です。
「糖尿病になったら、もうおやつは一切ダメですよね?」外来で、実際にとても多く聞かれる質問です。
転院されてきた患者さんの中には、
・主治医から間食を全面禁止されていた
・何を食べていいのか分からず不安になった
・「食の楽しみ」が奪われ、気持ちが落ち込んでしまったという方も少なくありません。
しかし、間食=悪と一括りにする必要はありません。実は、選び方・量・タイミングを間違えなければ、おやつは血糖管理の「敵」ではなく、味方になります。
本記事では、糖尿病専門クリニックで日々診療を行う現役医師の立場から、実際にフリースタイルリブレを装着して検証したデータをもとに、「血糖値を悪化させるおやつ」と「血糖値整えるおやつ」のTOP5を公開します。
血糖値を“急激に悪化”させるおやつTOP5
「ヘルシーだと思っていたものが、実は血糖値を急上昇させていた」というケースが非常に多いです。私の体で起きた「リアルな数値」も併せてお伝えします。
第5位:和菓子(大福・羊羹など)

脂質が少なくヘルシーなイメージですが、実は洋菓子よりも血糖値が上がりやすい傾向にあります。
私も実際にフリースタイルリブレを使って実験してみました。結果は下記の画像の通りです。
最初の山は、大福を1つ食べた時の血糖値の変動です。ご覧の通り、急角度で血糖値が上がっており、その後急降下していて、見事な乱高下を起こしています。
次にシュークリームを食べて実験してみました。緩やかに上昇しており、大福を食べたときと比較すると血糖値のMAX値は半分くらいに留まっています。
このように、私の人体リブレ実験でも和菓子は洋菓子と比べると血糖値は上がりやすいことが分かりました。

第4位:清涼飲料水(エナジードリンク・スポーツ飲料)

これらは「ペットボトル症候群」を引き起こし、意識障害で救急搬送されるリスクがあります。
【チェックリスト】3つ以上なら即受診を!
・飲んでもすぐ喉が渇く
・1週間で2kg以上の急激な体重減少
・夜中に何度もトイレに起きる
・口の中が甘酸っぱい匂いがする
・吐き気・意識がもうろうとする
第3位:カフェラテ(砂糖なしでも要注意)

「砂糖を入れていないから大丈夫」は禁物です。
上記はスターバックスのカフェラテの糖質量を比較したものです。
トールサイズでご飯茶碗半分ほどの糖質が含まれています。
また、液体は噛む必要がなく、胃をすぐに通過するめ糖の吸収が早くなります。
牛乳や豆乳に含まれる「乳糖」も“純粋な糖質”なので飲み過ぎには要注意です。
第2位:カレーライス(糖質×脂質のフルセット)

おやつではありませんが(笑)カレーライスも血糖値スパイクの代名詞です。
実際に、フリースタイルリブレを装着して計測を行いました。
検証条件
家庭用中辛ルウ + 白米200g(標準的な一人前)
実測結果
摂取後わずか30分で、血糖値が「+95 mg/dL」も急上昇しました。
さらに1時間後も180mg/dLを超えたまま「高止まり」の状態に。
白米の糖質だけでなく、ルウに含まれる小麦粉(糖質)と油脂、そしてジャガイモなどの具材が合わさることで、インスリンが追いつかないほどの「血糖値スパイク」を引き起こしたのです。
医師が教える、血糖値を暴走させないための「3手」
とはいえ、カレーを一生やめるのは現実的じゃありませんよね。そんな時は、次の3つの工夫を取り入れてみてください。
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①ご飯は「半量(100g)」または「マンナンごはん」にする
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②ルウを「カロリーハーフ」タイプにする(小麦粉や脂質が抑えられています)
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③「温泉卵」または「納豆」を添えて、たんぱく質で吸収を遅らせる
この「3手」を打つだけで、血糖値の乱高下をグッと抑えることができます。
第1位:市販の野菜ジュース

市販の野菜ジュースは、200mlパックで 糖質量約15g。作る過程で食物繊維はほぼ除去され、残るのは濃縮された「液体の糖」です。飲むなら「無添加のトマトジュース」を選びましょう。
血糖値を“整える”おすすめおやつTOP5
我慢するのではなく、これから紹介するおやつに「置き換える」ことでHbA1cの改善が期待できます。
第5位:焼き芋(冷やして食べるのが正解)

甘くてホクホクの焼き芋は、実は工夫次第で「血糖値を安定させる味方」になります。
なぜ焼き芋は血糖値にやさしいのか?
理由は大きく2つあります。
1つ目は、豊富な「食物繊維」。これが胃腸での消化をゆっくりにし、糖の吸収を穏やかにしてくれます。
2つ目は、「低〜中GI食品」であること。白パンやお菓子(GI値90〜100)に比べ、焼き芋は約55〜60と低めです。
さらに効果を高める「医師推奨の食べ方」
ここで、ぜひ実践していただきたい「裏技」があります。
①「冷やして」食べる
一度加熱したあとに冷蔵庫で冷やすと、でんぷんの一部が「レジスタントスターチ(難消化性デンプン)」に変化します。これは食物繊維と同じような働きをし、食後の血糖上昇をさらに抑えてくれる優れものです。コンビニでも手に入る「冷やし焼き芋」は、実は理にかなったおやつなんです。
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②「皮ごと」食べる
皮の部分には食物繊維が特に集中しています。血糖値の急上昇を防ぐために、ぜひ残さず食べてください。
注意点:食べすぎは禁物!
いくら身体に良いとはいえ、糖質であることに変わりはありません。食べすぎれば血糖値も体重もオーバーしてしまいます。
【1日の目安量】
小ぶりサイズなら: 1本まで
大きめのサイズなら: 1/2本まで
「甘いものがどうしてもやめられない」という方は、まずはこの「冷やし焼き芋」への置き換えから始めてみませんか?
第4位:りんご酢炭酸水

米国での研究により、リンゴ酢には「食後の血糖上昇を抑える効果」が認められています。さらに、酢酸やペクチン、ポリフェノールといった成分が、腸内環境を整え、脂肪燃焼を助けるといった嬉しい副次効果も期待できます。
しかし、選び方を間違えると逆効果になるため、「2つの鉄則」をお伝えします。
鉄則1:原材料は「りんご果汁のみ」を選ぶ
市販のリンゴ酢ドリンクには、飲みやすくするために砂糖や果糖ブドウ糖液糖がたっぷり入ったものがあります。これでは血糖値を上げてしまいます。商品の裏側の「原材料名」を必ずチェックしましょう。余計なものが入っておらず、原材料が「りんご果汁」のみのものを選びましょう。
鉄則2:飲みづらい時は「ラカント」を味方に
「酸っぱくて続けられない」という方は、はちみつを少量入れるのも手ですが、血糖値が気になる方には「ラカント」が最適です。
ラカントのメリット: 砂糖と同じ甘さなのにカロリーゼロ。血糖値に影響を与えない天然由来の甘味料なので、糖尿病治療中でも安心して甘みを楽しめます。
「酸蝕歯(さんしょくし)」のリスク
りんご酢は健康に良い反面、強い酸性のため、飲み方を間違えると「歯の表面(エナメル質)」を溶かしてしまう恐れがあります。せっかく血糖値をケアしても、歯を痛めては元も子もありません。
【歯を守るための3つの予防法】
①飲んだ後は「水で口をゆすぐ」
お酢の成分を口に残さないことが大切です。また、飲んだ直後の歯磨きはNG。エナメル質が柔らかくなっているため、30分ほど時間を置いてから磨きましょう。
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②「ダラダラ飲み」をしない
長時間かけて飲むと、口内が常に酸性の状態になります。リフレッシュの時間に、1回で飲み切るのがベストです。 -
③「寝る前」は控える
睡眠中は唾液の分泌が減り、自浄作用が弱まるため、酸の影響を強く受けてしまいます。
第3位:乳製品(ギリシャヨーグルト・低脂肪チーズ)

手軽に取り入れられる「乳製品」は、血糖値を安定させたい方にとって最強の味方です。特に無糖のギリシャヨーグルトや低脂肪タイプのチーズは、太鼓判を押すおやつです。
糖尿病リスクが「47%低下」という驚きのデータ
乳製品と糖尿病に関する興味深い研究報告があります。
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ヨーグルトや低脂肪乳製品を週に4〜5回食べている人は、そうでない人に比べて2型糖尿病の発症リスクが低下。
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さらに驚くべきは、間食をポテトチップスなどのスナック菓子から「ヨーグルト」に置き換えた人では、糖尿病リスクがなんと47%も低下していたというデータです。
つまり、「おやつを我慢する」のではなく、「ヨーグルトに置き換える」だけで、健康への大きな一歩になります。
「飲むヨーグルト」の甘い罠
ここで一つ、「飲むヨーグルト」には要注意です。ヘルシーなイメージがありますが、実は大量の砂糖が隠されています。
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糖質の現実: 市販の飲むヨーグルト1本には、糖質が20g以上含まれていることも珍しくありません。これはスティックシュガー約7本分、あるいは「いちご大福1個分」に相当する糖質量です。
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吸収の速さ: 清涼飲料水と同じく「液体」なので、噛まずに素早く吸収され、血糖値の急上昇(グルコーススパイク)を招きます。
医師推奨の最強トッピング
選ぶなら、圧倒的に「無糖タイプのギリシャヨーグルト」や「プレーンヨーグルト」がおすすめです。
「味気ない…」と感じる方は、「ナッツ」や「ブルーベリー」を少しだけトッピングしてみてください。満足感がアップし、血糖コントロールにおいても理想的な「神おやつ」に進化します。
第2位:ナッツ(1日20gを目安に)

ダイエットや血糖コントロールの強い味方としておなじみの「ナッツ」。実は、医師の視点から見ても、非常に優れた特徴を持っています。
ナッツが「最強」と言われる3つの理由
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①低糖質: 糖質が非常に少なく、血糖値をほとんど上げません。
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②豊富な食物繊維: 糖の吸収をさらに緩やかにしてくれます。
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③ミネラルの宝庫: インスリンの働きを助けるマグネシウムや、塩分排出を助けるカリウムが凝縮されています。
ヘルシーだからと「食べすぎ」ていませんか?
血糖値には優しいナッツですが、脂質が多く、カロリーは高めです。 良質な油とはいえ、1袋まるごと食べてしまうと一気にカロリーオーバーになり、肥満(インスリン抵抗性の悪化)を招く原因になります。
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適量の目安は「1日20g」: 手のひらに軽くひとすくい。この量(約20g)を1日の上限にするのが、血糖コントロールを成功させる秘訣です。
セブンイレブンで見つけた「神ナッツ」2選

「素焼きナッツは味気なくて続かない…」という方へ。私が実際に食べて感動した、満足度抜群の低糖質ナッツをご紹介します。
① トリュフ香るトリュフナッツ(セブンイレブン) 袋を開けた瞬間の香りが贅沢で、まるで高級スナックを食べているような感覚になれます。お酒のおつまみ風ですが、しっかり低糖質なので罪悪感ゼロです。
② ロカボマーク付き 低糖質ミックスナッツ サワークリームオニオン味(セブンイレブン) 「甘くないおやつ」が食べたい時に最適です。しっかりした濃いめの味付けなのに、パッケージに糖質量が明記されており、安心して選べます。
第1位:フルーツ(ブルーベリーが最強)

「えっ、フルーツって糖分が多いし、糖尿病にはダメなんじゃ……?」と思われましたか? 実際、当院へ転院されてきた患者様からも「前の主治医から『果物なんて絶対に食べるな』と厳しく言われていた」というお話をよく伺います。
しかし、最新の医学的知見に基づけば、フルーツは「量とタイミング」さえ間違えなければ、血糖値を安定させ、HbA1cの改善にもつながる心強い味方なのです。
2型糖尿病のリスクを「12%」下げるという事実
驚くべき研究データがあります。毎日フルーツを適量食べている人は、そうでない人に比べて、2型糖尿病の発症リスクが12%も低いという結果が出ているのです。
中でも、特におすすめしたいのが「ブルーベリー」です。
低糖質: 他の果物と比べても糖質量が控えめ。
食物繊維&ポリフェノール: 糖の吸収を抑え、血管の健康を守る成分がたっぷり。
「失敗しない」ルール
フルーツを味方につけるには、以下の「量」と「タイミング」を死守してください。
① 量の目安は「自分の拳(こぶし)ひとつ分」
1日に食べる量は、ご自身の握りこぶしサイズが適量です。
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りんご: 1/2個
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バナナ: 小ぶりのもの1本
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みかん: 1個
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ぶどう: 10粒程度
② タイミングは「食後」ではなく「間食(3時)」に
ここが最も重要なポイントです。食後にデザートとして食べると、食事で上がった血糖値をさらに押し上げる「血糖値の2段ロケット」が発射してしまいます。 理にかなっているのは「3時のおやつ」。間食として摂ることで、血糖値の急上昇を防げます。
医師推奨の組み合わせ
さらに血糖値の上昇を緩やかにするなら、「たんぱく質」と一緒に摂りましょう。フルーツ + 無糖ヨーグルト
フルーツ + 低脂肪チーズ
この組み合わせなら、満足感も高く、血糖コントロールも格段に安定します。
あなたのライフスタイルに合わせた治療を
食事療法は「一生続けられること」でなければ意味がありません。
当院では、患者様一人ひとりの血糖変動をリブレ等で可視化し、「食べたいものをどう食べるか」を一緒に考えるオーダーメイドの診療を行っています。
「最近、数値が気になる」「食事指導が厳しすぎて辛い」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
今回の記事はこちらの動画でまとめております↓
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参考文献
フルーツ摂取と糖尿病リスクの低下について Muraki I, et al. Fruit consumption and risk of type 2 diabetes: results from three prospective longitudinal cohort studies. BMJ. 2013;347:f5001. https://www.bmj.com/content/347/bmj.f5001
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ヨーグルトによる糖尿病リスクの47%低下について University of Cambridge. Yoghurt cuts risk of type 2 diabetes. https://www.cam.ac.uk/research/news/yoghurt-cuts-risk-of-type-2-diabetes
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りんご酢による血糖値・HbA1cの改善効果 Effects of apple cider vinegar on glycemic control and insulin sensitivity in patients with type 2 diabetes: A GRADE-assessed systematic review and dose-response meta-analysis of controlled clinical trials. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39949546/


